足指に水疱が出来たので水虫かと思ったら水虫じゃなかった
事の始まり
半年ほど前から、左足の親指周辺に水疱ができはじめた。かゆみは無いのだが、水疱の周りの皮膚全体が赤くなっていた。ちょうど冬場でアパートの風呂では寒く、近くのスーパー銭湯に通うようになっていたため「あー、水虫もらっちゃったかー」と思い、皮膚科に行くことにした。
ゴッドハンド
この皮膚科、会社の後輩から紹介されたところで、後輩いわく「マジでゴッドハンドですよ」とのこと。皮膚科医の作業でゴッドハンドが炸裂する機会があるのかは不明だが、命に関わる症状でもないのでどこでも良いだろうと、安易な考えでお世話になることにした。
響き渡る絶叫
その皮膚科はいかにも町医者、という感じの小さなスペースに、大量の老若男女がひしめき合う状態だった。そんな状態だから、診察の回転率が早い早い。さっき正面の入り口から入った人が、3分後には奥のカーテンから出てくるといった状態だった。
そんな状態だったので、自分の番もすぐに回ってくるなーと思っていたら、一人前の小学校低学年ぐらいの女の子がすごかった。中に入って3分ぐらいだろうか、いきなり
「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーー!!!」
「う〜〜〜〜そ〜〜〜〜つ〜〜〜〜き〜〜〜〜!!!!」
「ぎょうはやらないっていってたのにぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!」
と、恐ろしい泣き声が聞こえてきた。「!?」っとなり、診察室の壁を見ると更に絶叫が続く。
「いいいいぃぃぃぃたいいいいいいいぃぃぃーーーーー!!!」
「ぼうやべでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
ときおり看護婦さんと思われる人たちの
「大丈夫!大丈夫! もうちょっとだから!!」
「すぐに終わるからね!!!!」
という励まし声が聞こえるが、それをかき消す勢いで
「ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
という絶叫が響く。
えぇぇぇぇぇぇ… 何してんのコレ? 皮膚科でそんなに絶叫するような治療ってあるの? というかメッチャクチャ泣いてるけど、ゴッドハンドじゃなかったのかよ…
とビクビクしていると、やがて泣き声が小さくなってきた。
「はーい、よく頑張ったねー」
「ごめんね痛かったねー」
と看護婦さんの声が聞こえてきたので、ようやく地獄の時間が終わったのだろう。よかった、不幸な子供はいなかったんだね、いや、いたんだけれども。
「えっぐ、えっぐ、、、、もう終わり? もうしない?」
と、女の子の声。何をしているのかよくはわからんが、痛みに耐えてよく頑張った! 感動した! と思っていたら。
「・・・・・・・」
おい、何だその沈黙は、まさか…
「はい、それじゃもう一本、あと少しだけ我慢ねー」
「ぎゃあああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!! もうやだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
リズムに乗ったコントのような流れの良さ、あまりの無慈悲さに思わず「ブフッ」と吹き出してしまった。それは中の看護婦さんも同じのようで「フヒヒッ」という声が漏れ聞こえてきた。
そんなこんなで、その女の子にとっては地獄の責め苦のような10分程度が過ぎ、自分の番となった。億のカーテンから出てきた女の子の顔は、涙と鼻水でエライことになっていた。
診察10秒
診察室に通されて、症状を伝える。最初は水虫程度だと思い、余裕ぶっこいていたが、かゆみが無いのでひょっとして別の病気では? もしも水虫ではなくて、特殊な治療が必要なもので、それがさっきの女の子のような「何本か」をアレする悶絶絶叫治療だったら…?
とビクつくまもなく、先生は患部を一瞥するやいなや
「皮膚炎ですね。薬出すんで塗っておいてください」
え? あの、今本当に一目見ただけですよね? 10秒もじっくり見てない感じなんですが…
「水虫でも無いです、塗り薬出しておくので、風呂あがりと朝靴下履く前に塗ってください」
今から考えると、その場で少し色々突っ込んで聞くべきだったのかもしれないのだが、その直前の女の子の絶叫があまりにも衝撃的だったこともあり、ちょっと頭がおかしくなっていたのか、その時は「やっぱりゴッドハンドだな!!」と納得して後ろのカーテンから出ていった。
お薬をもらう
受診が終わり、窓口で料金を支払う。それと同時に容器に入った薬を受け取り、家路につく。これも今から考えると迂闊だったのだが、そもそもこのもらった薬がどんなものか一切わからない。薬の容器も、そこの診療所独自のもので、白の丸い容器に診療所の名前が書いてあるだけ。
苦難の始まり
この日から、よくわからない状態になった左足親指に、よくわからない軟膏を塗り続ける日々が始まる。